John Bacher

ちょっと古い話だが、先日久し振りに訪問したマウンテンショップで手に取った雑誌にて偶然John Bacherの訃報を知った。

自分がクライミングに没頭していた20年前時点で既に時代の中心はいわゆるヨセミテCamp4に代表されるクラックにフレンズやらナッツやらをブチ込みながら登るアンチエイド的な趣旨のフリークライミングから、ヨーロッパのフェース(時には人工壁)を相手により困難さの追求に重きを置くスポーツクライミングへの過渡期だった。
そのため彼のようなクライミングスタイルの意味を理解したのはある程度登れるようになる過程においてだった、時々のクライマー間の雑談や雑誌等から、当時自分達が気楽に楽しんでいたスタイルとは異なるスタイルが存在したからこそ今がある的な、歴史/スタイル/ルートを渾然一体で常に意識していたように記憶する。

既に多くで語られていることだが、例の写真に代表されるスタイルが当時のクライマーに与えた影響は計り知れない、また死ぬまで自分の信念に忠実だった生き様自体にクライマーの多くが敬意を払っていることは雑誌の追悼特集に鈴木英貴や平山裕二が寄稿していることからも明らかだ。

自分のような凡人にはとても真似できないだけに絶望的なまでに美しい人生だったと思う、そして残された10代の息子のことを面識のない誰もが気にかけるアメリカの古き良き時代のコミュニティが生きづいていることにも感銘を受ける、合掌。